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ジャズ×寄席×現代アート in 赤レンガ feat. 磯子

2010年1月23日取材
以前、誌上で告知記事を掲載した「横濱Jazz寄席2010」に取材に行ってきました!

3日間に渡って開催されたイベントでしたが、磯子マガジンが行ってきたのは2日目の夜の部「大人なジャズ寄席」です。会場は赤レンガ倉庫の1号館ホールでした。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ倉庫 JAZZ×寄席 in 赤レンガ
見えてきました、赤レンガ倉庫。(クリックで拡大)
その向こう側には日本が誇る豪華客船「飛鳥II」が停泊していました。(クリックで拡大)
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
日本の屋外スケートリンクの代表的な存在となった「アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫」。今シーズンはいよいよ2月28日(日)までです。
そしてこれが「横濱Jazz寄席2010」の会場となった赤レンガ倉庫1号館。
この日の取材のメインは、磯子区在住の現代アート作家・北川純さんのパフォーマンスとインタビュー。ですが、もちろんJazz×寄席も楽しみです。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ倉庫
奥に北川純さん作のオブジェが設置されたステージでJazz寄席開幕! まずは2グループによるセッションが繰り広げられます。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
左に陣取るは、福島久雄率いるカルテット+1。
右手には、林栄一+小山彰太+国仲勝男のTHE TRIO。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
福島久雄率いるカルテット+1の演奏後、北川純さん登場。中央で青いシートを持っているのが北川さんです。
客席から2人の女性ダンサー(※)が踊りながらステージへ。何が始まるんでしょう。磯子マガジンも全然知りません。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
ジャズの演奏が響く中、ダンサーは2枚の白い布の間に入っていきます。
北川さん、水の入ったスプレーを持ち出し・・・
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
シュッシュと水をかけていきます。林家しん平さんや客席のお客様も参加。
最後に体に沿って布を切り取って、セクシーな「濡れT」の完成。(「T」はTシャツのことです)
※女性ダンサーは「コンテンポラリー・ダンス・ユニット86B210」のお二人です。公式ブログはコチラ

JAZZ×寄席 in 赤レンガ

ステージでのパフォーマンスを終えたばかりの北川さんに楽屋でお話を伺いました。

北川純さん in 横濱Jazz寄席
北川 純(きたがわ・じゅん)さん
現代アート作家。愛知県出身、磯子区在住。44歳。

--- お疲れ様でした。先ほどのパフォーマンスですが、なんと呼べばいいでしょうか。

北川:「濡れTプロジェクト」って呼んでます。僕はいろいろなTシャツを作ってるんですけど、その一環ですね。

--- 白い布を水で濡らすと体が透けて見えて、それがTシャツの絵柄のように見える・・・、あれも一種のTシャツだっていうことですね。

北川:そうそう、そうそう。

--- どういう発想で始められたんですか?

北川:僕が作るTシャツは、エロいTシャツが多いんですけど、普段は自分で絵を描いて・・・、シルクスクリーンていう版画の技法でプリントしてるんですね。いま一般的にもTシャツは、シルクスクリーンていう技法で作ることが多いんですよ。

で、そうじゃない、違う技法は無いかなと思ってね。そのときに、濡れて透けた状態をそのままTシャツの柄にできたら面白いんじゃないかなぁと、いうのが発想ですね。

パフォーマンスの最後に写真を撮って、そのままインクジェットのプリンタでTシャツにプリントアウトするんですよ。それを着れば濡れたように見えるっていう。(※そのTシャツは、ステージの最後に披露されました。)

--- 今日はジャズの生演奏とのコラボレーション・パフォーマンスでしたが、いかがでしたか?

北川:僕は自分のペースでやってるから、合わせる人が大変だったかもしれない(笑)。

--- このパフォーマンスは今日で3回目ということでしたが、これまではどんな感じだったんでしょうか。

北川:1回目は去年の7月くらいかな。で、2回目は昨日(笑)。フランス大使館の芸術イベントの中でやりました。僕だけじゃなくて、いろんな人が作品出してて。で、(事前にできていた)そのフランス大使館でのイベント・チラシをJazz寄席のスタッフの方が見て、「これいいねぇ、ウチでもやってよ」って。そしたら偶然日程が次の日でね、2日連続の「濡れT」になりました。

--- 昨日のフランス大使館ではBGMはあったんですか?

北川:ありました。昨日はわりとロック系な感じだったかな。ロックと映像を一緒に、VJと一緒にやってる人たちと共演したんですね。彼らを呼んだ理由は、VJの人がスクリーンを使うんですよ。だから、まず最初にスクリーンに映像を流してもらって、そのスクリーンに女の子が入って、映像が消えて、濡れTが始まるっていう、そういう風にしたんですよ。

--- ロックとジャズだと、「濡れT」パフォーマンスの印象も違ってくる気がしますがどうでしょう?

北川:どうなんでしょう。やっぱり違うと思いますね。どうなんだろうなぁ・・・うーん。僕はやってる方だから、終わってどうだったかっていうのが良くわかんないんですよね。だから今日のは、いま終わったばかりでよく分かってないんですけど。昨日も自分では良くわかってないんだけど、見てくれた人がみんな「良かった」「良かった」って言うから、あぁ、良かったんだろうなぁって。

--- 見に来てくれた人の反応で。

北川:そうそうそうそう。それでしかわからないですね。

--- ところで、今日ステージに飾られていたオブジェについて教えてください。

北川:
北川純さん in 横濱Jazz寄席
チラシに使われた
北川さんのイラスト
最初にJazz寄席のイメージ・チラシを作ってくれって(Jazz寄席のスタッフから)言われたんですよ。それで、どういうコンセプトにしようかっていう話をして、ジャズと寄席のイメージがわかるように、それと横浜のイメージが感じられるものがいいと。

それで考え始めて、まず横浜らしさって何かなって思った時に、僕は赤い靴を履いた女の子を・・・。他にベイブリッジとかあるけど、それじゃ月並みだなと思って。ジャズは歌もあるから、(そこからの連想で)童謡の『赤い靴』を思い出して。あぁ、それが横浜っぽいかなと思ってね。そこにジャズのトランペットと落語の座布団をミックスさせて、ああいうのを作ったんですよ。

で、面白いのができたなって自分でも思ったんで、舞台のオブジェも作って欲しいって言われた時に、あれを巨大化したものを、風船を使って立体で作ることを提案したんです。僕は風船でいろいろ作品を作ってるんですよ。素材として風船を使うのは得意なんで。

--- チラシより風船の方が、女性の足がちょっとふくよかな感じですね。

北川:そうですね。難しいなと思ったのはね、あの風船は初めて特注したんですよ。自分ではあれだけの大きさのものは作れないから。そしたら人が作るわけだから、自分のイメージとは少し違って・・・。僕も最初見たとき、ちょっと太った足だなと思った。

JAZZ×寄席 in 赤レンガ
こちらが、立体化され、ステージに飾られたオブジェ(クリックで拡大します)

--- 少しイメージにずれがあったんですね。

北川:うーん、そう。こんなイメージでっていう模型も作ったんですけど、それ以上にふくよかだった。でもまぁ、はっきり言って風船屋さんも裁断したりしてやってるから(膨らませてみるまで)わかんないんだよね、たぶんね。

--- でも風船のふくよかな感じも、なまめかしくていいですよね。

北川:うん、だからこれはこれでいいかなと思ってね。

--- この作品のタイトルは?

北川:あぁ・・・、聞かれたことなかった・・・(と、北川さん、その場でタイトルを考えてくださり)、『赤い靴はいてた女の子のその後』(笑)。

スタッフの方:女の子が海外に行ってからジャズ・シンガーになって、帰ってきたのかもしれない(笑)。

北川:あぁ、そうかもしんない(笑)。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
ロビーで販売されていた北川さん制作のTシャツ
JAZZ×寄席 in 赤レンガ
メジャーが巻き付いてる柄のTシャツ
(クリックで拡大します)

--- ロビーで北川さん制作のTシャツが販売されていました。胸の部分にメジャーが巻き付いている絵柄のTシャツもありますね。

北川:メジャーに目盛りが書いてあって、88cmになってるので、誰が着ても(バストが)88cmになるっていう。豊胸Tシャツっていうかね(笑)。Tシャツを使いながら、面白いギャグみたいなことができないかな、それがエロチックだったらより面白いなと。そういうことですよね。

--- ところで今後の活動予定を教えてください。

北川:7月か8月頃に、ちょっと遠いんですけど静岡県の大きな博物館で個展をやる予定です。清水のフェルケール博物館ていうところで。もともと海洋とか船舶とかをテーマとしてた博物館で、常設展はそういうテーマに沿ったものなんですけど、美術品を展示するスペースも豊富にあって。建物もバブルの時代にできたから、池もあって、なんとかもあってっていうね。もともと静岡の柚木さんていう方が間に入ってくださって。このJazz寄席も柚木さんが紹介してくれたんですよ。

--- ぜひ今度は磯子でも何かやって頂きたいです。よろしくお願いします。

北川:そうですね(笑)。いいとこあります? 僕ね、ギャラリー、ギャラリーしたとこじゃなくてね、変なとこが好きなんですよ。いい場所があったらお願いします(笑)。

●●●


--- それでは最後に、今お住まいの磯子について少しお話を聞かせてください。いつ磯子区にいらしたんですか?

北川:4年前ぐらいですね。

--- どうして磯子に?

北川:その前は神奈川県の愛甲郡に住んでたんですね。山の中の一軒家に。そこが老朽化して、大家さんから「取り壊すから出てってくれ」みたいなことを言われて。

ちょうどその頃、寿町(中区)で天井画を描く仕事をしてたんですよ。寿町の人たちが集まる家みたいのがあるんですけど、そこに大きな天井があって。職安(職業安定所=ハローワーク)に並んでる人たちが、冬なんか寒いからドラム缶で湯を焚いてる。それで、もともと白かった天井が煤(すす)で真っ黒になっちゃったんですね。その天井がすごく面白くて、そこに絵を描く仕事をしてたんですよ。だから、朝、愛甲郡から出てきて寿町に行って、絵を描いてた。でも遠いから、BankARTに部屋を借りて泊まったりしてたんですよね。

で、(愛甲郡の家が取り壊されるから)新しいすまいを探さなきゃいけないってことで、ある日、寿町での仕事が終わってBankARTに帰るとき、途中にある不動産屋に寄ったんです。そこで、「汚してもいいように古い一軒家で安いところ」って言ったら、紹介してくれたのが磯子区の物件でした。

--- 実際にお住まいになっていかがですか、磯子は?

北川:いいですよ。いいと思う。愛甲郡のときは山の上の一軒家だったんで、まわりに誰もいない。だから音出したって平気だったのね。だけど、磯子だと人との距離が近くなりましたから。「にんげん近っ!」(笑)って、最初は窮屈だった。だけど、もう4年もたてば慣れてね。ある意味、社会復帰しました(笑)。

--- 近所付き合いもありますか?

北川:最初はワケワカランのが来たぞ、みたいに思われてたみたいで。ひとりで住んでて、昼間も居るし、変な風船とか出し入れしてるし(笑)。用心されてたんだけど。

こないだね、今日のオブジェのトランペットの塗装を外でやってたんですよ。そしたら隣のおばちゃんが「何やってんの?」とか言ってきて。僕が今回のことを説明してね、「こんな変なものばっかり作ってるんですよ」って言ったら、そのおばちゃんが「変なもの作ってるからこそ仕事が来るのよ、普通のもの作ってたら仕事なんか来ないわよ」って(笑)。あ、理解してもらえたんだな、と思った瞬間がありましたね(笑)。

--- いい近所付き合いですね(笑)。今日はお疲れのところ、どうもありがとうございました。



関連リンク
北川純さん 公式サイト
北川純さん 公式ブログ

磯子区に縁のある展示品が他にも・・・

北川さんのインタビューを終えてロビーに戻ると、第二部が始まっていてお客さんたちは既にホールの中へ。ほぼ無人状態のロビーにも磯子区に縁のある作品が飾られていたのでした。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
ロビーには絵画などが展示されています。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
この手作りのぬいぐるみは、以前杉田におすまいだったという小宮山喜久子さんの作品。普段、ぬいぐるみになることは少ないと思われる生き物たちがモデルになっていて新鮮です。ご本人によると「まだ始めたばかりだから」だそうなのですが、値段もずいぶん安く感じました。右のカニなんか2,500円です!
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
こちらは磯子区在住の宮崎文子さんによる作品です。
ドリンクコーナーにいたスタッフの方。ノリノリで撮影に応じてくれました。

第二部は本格的にジャズと寄席がコラボレーション

後半はいよいよジャズと寄席のコラボレーション。トップを飾った藤山晃太郎さんの和妻(和の奇術)、そしてTHE TRIOの演奏は残念ながら見逃してしまいましたが、ホールに入ると、やなぎ南玉さんの江戸曲独楽が行われていました。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
華やかな出し物に、楽しい曲調のジャズがすごくマッチしていました。
プレイヤーの視線が、独楽(コマ)に注がれ、ぴったりのタイミングで音が鳴ります。(クリックで拡大)
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
トリは林家しん平さんの新作落語『仮面ライダーのゆうつ』。
プレイヤーの方も、思わず笑っちゃいます。(クリックで拡大)
JAZZ×寄席 in 赤レンガ
JAZZ×寄席 in 赤レンガ
フィナーレの「骸骨かっぽれ」に登場したのは、北川さんがインタビューで触れていた『プリントアウトした濡れT』です。
というわけで、横濱Jazz寄席の「大人なジャズ寄席」はあっという間に終了です。ジャズと寄席のコラボレーションはとても楽しかった。そして、何と言っても北川さんのパフォーマンスがインパクト大でした。

主催者の方の話では「できれば次回も横浜でやりたい」とのこと。今回見逃した方、来年は是非!

横濱Jazz寄席2010公式サイト

屋外スケートリンクの統括責任者は元杉田劇場の菊地さん

さてさて、最後も赤レンガにまつわる磯子区の話題です。現在、赤レンガ倉庫1号館の副館長代行を務めているのは、菊地健一さん。以前は杉田劇場にいた菊地さんです。当時は、イベント紹介などで磯子マガジンにいろいろご協力いただきました(例えばこんな記事あんな記事)。

その菊地さん、現在は赤レンガ倉庫1号館の副館長代行として活躍中で、屋外スケート「アートリンク」の実務面を統括している責任者でもあるのでした。2005−06シーズンにスタートしたスケートリンクは今年で5年目。日本でも都市型の屋外スケートリンクがビジネスとして成り立つ、というモデル・ケースになっているそうです。

だいぶ寒さがゆるんできたここ数日。このアートリンクも今シーズンは2月いっぱいで終了です。盛り上がっているバンクーバー五輪にちなんで、磯マガ読者の皆さんも、今季最後の華麗な滑りをみなとみらいで楽しんではいかがでしょうか。ただし、トリプル・アクセルとかは危険なので辞めましょう!
JAZZ×寄席 in 赤レンガ JAZZ×寄席 in 赤レンガ
こちらは赤レンガ倉庫1号館から見た、夜の大さん橋と飛鳥II。(クリックで拡大)
赤レンガの壁にきれいな映像が流れる今年のアートリンク。入場者数もかなり増えたそうです。
JAZZ×寄席 in 赤レンガ
アートリンクと飛鳥IIのコラボレーション
(クリックで拡大)
関連リンク
横浜赤レンガ倉庫 公式サイト
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