コンテンポラリー・ダンス・カンパニー「コンドルズ」を主宰する近藤良平さんが杉田劇場にやってきます。近藤さんの名前に記憶が無い人でも、NHK『サラリーマンNEO』の「サラリーマン体操」をご存知の方は多いのではないでしょうか。あのコーナーで指導役をしているのが近藤さんです。
コンドルズと近藤さんは、最近、特に若い世代に大人気で、公演チケットもいつもあっという間に売れきれてしまうんだそうです。
その近藤さんが、日本舞踊の坂東流師範・坂東扇菊さんと十年来取り組んでいる【近藤良平+扇菊
プロジェクト】が遂に杉田劇場に登場です。
ということで、杉田劇場の堀木さんに詳しいお話を伺ってきました。
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--- 今回のステージはどんな内容でしょうか?
堀木:豊臣秀吉とその妻・ねねの物語をモチーフにした、コンテンポラリー・ダンスの近藤良平さんと日本舞踊の坂東扇菊さんのコラボレーション「天下」を上演して頂きます。この作品は2007年に三渓園でも上演されたことがあります。
秀吉とねねの物語をご存知の方はその辺をとても楽しんで頂けると思いますし、よく知らない方でも動きを見ているだけでも、その綺麗さに感動して頂けると思います。舞台はすごくシンプルで、大道具があったり派手な照明があったりするわけではなくて。
それともうひとつ、狂言の「棒縛」を題材にした「御前に」っていう作品も上演して頂くんですが、コチラの方はコンドルズのメンバーの山本さん・藤田さん・鎌倉さんが出演で、構成を扇菊さん、振付を近藤さんと扇菊さんお二人で担当されています。
--- 近藤さんと扇菊さんは以前からコラボレーションされているようですね。
堀木:はい。10年ぐらい前からされてるそうです。
近藤さんは「コンテンポラリー・ダンス」の分野で活躍されています。コンテンポラリーって現代的っていう意味なんですけど、決まりがないんですね。なんでもダンスになっちゃう。例えば洋服を着る動作とか、身近にあるもの何でも。で、近藤さんのダンスはすごく力強いです。
一方で日本舞踊っていうのは、多くの方はテレビとかでご覧になって、何となくのイメージは湧くと思うんですけど、でも生で実際に見ると、日舞の動きってホントに凄く綺麗なんです。「はんなり」っていうか、柔らかい、優雅な感じですね。
その対照的なダンスのコラボレーションは、私も去年お二人の「真夏の忠臣蔵」っていう作品を拝見しましたが、すごく刺激的です。例えば、日本舞踊をよくご存知の方でも、コンテンポラリー・ダンスとの共演で、日本舞踊の新たな魅力を発見して頂けるんじゃないかと思います。
--- お二人は日舞とコンテンポラリー・ダンス、それぞれの踊りをされるんですか?
堀木:はい。だけどそれがバラバラじゃなくって、お互いの動きをちゃんと計算して作られてるので、相乗的な効果が生まれるんですよ。
あ、5月号の「ヨコハマ・アートナビ」で今回の公演が特集されてますんで、ぜひご覧ください。近藤さんのインタビューが掲載されています。
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「ヨコハマ・アートナビ」は、杉田劇場、横浜美術館、赤レンガ倉庫1号館やCDショップ、書店などで無料配布されています。また、インターネットでも公開されていて、インタビューはインターネットの方がロング・バージョンです。 |
--- では、お二人のプロフィールについて教えてください。
堀木:坂東扇菊さんは日本舞踊の師範の方なんですけど、若くして襲名されて伝統的な日舞を続けられてる一方で、いろんなジャンルの方たちとコラボレーションされたり、海外で公演されたり。例えば中国、フランス、モスクワやアイスランド、ノルウェーなどでも公演されています。そんな風に日舞の世界にいろんな新しいものを積極的に取り入れてる方なんですね。
それと、公演だけじゃなくて、ワークショップをされたり、日本舞踊の普及活動にも尽力されています。
--- 続いては近藤さんを。
堀木:近藤良平さんはコンドルズっていう男性だけの舞踊集団を主宰してる方です。近藤さんは最近ホントに凄い人気なので知ってる人はホントに良く知ってて。今回の公演もかなり遠方の方から問合せが来たりしてます。
『サラリーマンNEO』(日曜夜11:00〜、NHK総合テレビ)っていうバラエティ番組があって、生瀬勝久さんとか沢村一樹さんとかが出演されてるんですね。その番組で近藤さんとコンドルズのメンバーが出演する「サラリーマン体操」っていうコーナーがあって。NHKの体操番組のパロディーで、サラリーマンの日常、例えば「名刺を渡す」「お辞儀する」みたいなことを体操にしちゃうっていうすごく可笑しいコーナーです。毎回、最後の方で動作がどんどん過激になって、「ジャンプしながら名刺を渡す」とかになっちゃう(笑)。
※「サラリーマン体操」ほか、この番組のコーナーは不定期なので、放送されない週もあります。
お子さん向けだとNHK教育テレビの『からだであそぼ』(月〜金あさ7:30〜)で「かもしれないたいそう」とか「こんどうさんちのたいそう」っていうコーナーを持ってらしゃいますね。
あと近藤さんは、野田秀樹さんのNODA MAPとか舞台の振付もやってらっしゃいますし、氣志團や矢井田瞳さん、YUKIさんとか音楽の分野でも振付を担当されたり。 ほかにもTHE CONDORSっていうバンドもやられていて、CD出したり。4月には池袋のサンシャイン劇場でjealkbっていうロンドン・ブーツの淳さんがボーカルをやってるバンドとTHE
CONDORSが「Ballad of Lip」っていうお芝居をやったんですけど。で、5月4日には新宿のシアター・アップルで同じ二組で「Ballad
of Live」っていう対バンのライブをやるらしいです。
そんな感じで、非常に多彩な活動をされています。
--- 今回の公演の、杉田劇場としてのねらいはありますか。
近藤さんのファンの方たちって、私と同じくらいの20代・30代ぐらいの方が多いんですけど、杉田劇場ってそういう世代の人たちにあまり利用されてないと思うんですよ。だから今回の公演にはそういう若い世代の方たちにぜひ杉田劇場に足を運んで頂きたいっていう思いがあります。
もちろん、日ごろ杉田劇場に親しんくださっている世代の方たちにも大勢お越し頂きたいです。私、おととし仕事でフィンランドに行ったんですね。そこはすごい田舎町で、お店はスーパーぐらいしかない、飲食店も1軒だけ、っていうようなとこだったんです。でもコンテンポラリー・ダンスのフェスティバルが開催されるときは、国内外からたくさんの人がそこに集まるんですよ。しかも若い人より、50代・60代っていう感じの方が多くて。コンテンポラリー・ダンスに興味を持つ「大人」がこんなにいるんだってビックリしたんです。
だから、今回の公演は、そういう世代の方たちにもすごく楽しんで頂けると思います。「こういう表現方法もあるんだ」っていうのを見て頂きたいです。
--- ワークショップもあるんですね。
はい。29日午後6時からは大人向け、30日午前11時からは子ども向けのワークショップがあります。
大人向けはトークと実演の両面からダンスを紹介するような内容です。ワークショップで実際に体験して頂くと、翌日の公演をより深く楽しんで頂けるんじゃないかと思います。
子ども向けのワークショップは近藤さんと一緒に、動物になったり、お話を作ったり、自分の体を使って遊びます。さっきお話したように近藤さんはNHK教育テレビで子ども向け番組に出演されてるので、子どもたちとコミュニケーションをとるのも非常にお上手ですよ。
--- ところで今回のチラシ、カッコいいですね。
堀木:これ、ヤナキヒロシさんに作って頂いたんですよ。
--- え? 意外ですね。ヤナキさんっていうと「アリス」のときみたいに可愛いイラストを描かれるイメージがあります。
そうですよね。杉田劇場でのヤナキさんはそういうイラストで知られてるんですけど、実はランドマークの能の公演チラシなんかも作られてて。それが、和風な中にも現代的なエッセンスが散りばめられたすごく素敵なものなんですよ。私はそれを見てたんで、今回「天下」の公演が決まったときに、チラシは絶対ヤナキさんにお願いするしかないと思って、作って頂いたんです。
--- なるほど。では最後に磯子マガジン読者にメッセージをお願いします。
堀木:杉田劇場の自主事業では音楽が多いんですけど、今回はなかなか見られないダンスの公演です。「音楽」は、自己表現の方法として広く親しまれてると思うんですが、「ダンス」っていう選択肢も表現の方法としてあるんだ、っていうことを多くの人に知って頂けたらと思ってます。「自分の体を使って自己表現している人がいる、そういうこともできるんだよ」っていうことを。
もちろん既にダンスをやってる人、例えばクラシック・バレエを習ってる人、ヒップ・ホップのダンスをやってる人にも、今回の公演を見て頂けたら、「あ、こういうダンスもあるんだ、こういう表現もあるんだ」っていう風に感じてもらえると思います。
それと、例えばワークショップで知り合った人たち同士で何か新しい活動が始まるとか、そういう人と人がつながるキッカケになったらいいなぁと思っています。
ぜひこの機会に杉田劇場に足を運んでみてください。
関連リンク
○コンドルズ 公式サイト
○坂東扇菊 公式サイト
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