「饗応の膳」10万円のコース料理の中身
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2009年6月8日取材 |
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横浜フランス月間の中でも特に話題となったイベント「横濱饗応の膳2009」(主催:ガストロノミ協議会)。三渓園の鶴翔閣を貸し切り、限定30名、なんと、ひとり10万円のコース料理が出されました。
150年前、江戸幕府がペリー提督をもてなした「饗応の膳」を研究している濱新の三代目店主・山菅浩一朗さんをはじめ、横浜の和・洋・中の名だたる料理人、さらにソムリエ、バーテンダー、パティシエまでもが結集して「2009年の饗応の膳」をつくりあげる一大イベント。
磯子マガジンではイベントに関わった磯子区にゆかりのある人たちのお話を伺うのはもちろん、このコース料理の全皿を、写真と文章で詳しくご紹介いたします! |
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三渓園の中に立つ「食遊會 in 横浜三渓園」のパネル。「饗応の膳2009」は6月7・8日の2日間に渡って開催されたこの食遊會のイベントのひとつでした。 |
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こちらが「饗応の膳2009」の会場となった鶴翔閣。原三渓の住居として建てられた建物で、横浜市の有形文化財に指定されています。 |
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さてお待たせしました! 饗応の膳2009の全品をご覧頂きます。こちらです。クリックしてください。 |
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これが饗応の膳2009です。全6皿。どちらでも写真をクリックすれば、10万円コースの全皿詳細を順にご覧になれます。 |
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磯子ゆかりの料理人が担当したお皿のさらに詳しい解説
●洋の膳 “横浜スタイル今昔”より 「冷製雲丹と卵のスクランブル、磯(子)の香り、金箔を飾って」
作・ホテルモントレ 吉田総料理長 (浜中OB)
自分は横浜磯子の生まれで、昭和30年〜40年にかけて、磯子湾の根岸から金沢にかけて海苔の養殖が盛んに行われていました。小さい頃、磯子の海で遊んだことを思い出して、雲丹(ウニ)の最後に磯(磯子)の香りを海苔で残すように仕上げました。現在、金沢区の野島に少しですが養殖しているところがあり、その海苔を使用いたしました。
※ホテルモントレは、旧ザ・ヨコハマホテル(通称ザヨコ)です。
●和乃膳 “横濱御もてなしの膳”より 「スッポンの煮こごり」「タコ白扇 緑酢和え 幻の杉田梅の梅肉を添えて」
作・夕凪 江川店主 (磯子区生まれ育ち)
「スッポンの煮こごり」は、これから暑い夏を迎えるので、皆様に英気を養って頂きたいとの気持ちからメニューにしました。ダシを取る水は、鹿児島の飲める温泉水として知られる寿鶴(じゅかく)を使用します。
「タコ白扇」は、私が料理の道に入った時、修行先の主人が最初に見せてくれた料理を私なりにアレンジしました。明石にひけをとらない佐島の活(!)地ダコを使用。いまや地元杉田で絶滅の危機にひんしている幻の杉田梅の復活を願って、今回自家製練り梅に使用しました。
●洋乃膳 “横濱にて浜を想うお膳” 「柴漁港シャコと陸奥湾帆立のムース、シャコの旨味たっぷりのアメリケーヌソース・長井漁港の赤座海老と共に」
作・パレ・ド・バルブ 山木シェフ
磯子から金沢(60年前に磯子から分かれた)の海産物は全国的にも素晴らしいものでした。遠浅な海岸線は海苔・シャコ・穴子・海鼠(なまこ)などの産地として有名でした。杉田村の住民のほとんどが海産物により生計を立てていたようです。また、丘では西洋花や梅ノ木(磯子区の木)などが盛んに栽培されていたようです。現在、浜はほぼ皆無です。今、この絶好の機会に50年後の横浜をイメージすることが大切です。自然の浜でなくても、長い年月をかけて自然に戻ることを期待して新作をお届けします。
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記者会見で配布された詳しいお料理解説の中で、自身の故郷を強調し、そこの産物をお料理に使っているのは、なぜか磯子区出身の料理人ばかり。そこには強い地元愛が感じられたのです。 |
フランスから来日したシェフも協力
今回はガストロノミ協議会の招きで、フランスからミシュランの星付きシェフ、ピエール・オルシさんと、そのお弟子さんで今は自身のレストランを持っているローラン・ボビエさんが来日していました。
オルシさんは、過去の横浜フランス月間にも何度も来日しているそうですが、パレ・ド・バルブ宮内オーナーの話によると、フランス人の星付きシェフを、こんなに何度も呼べる団体は、そう滅多には無いんだそうです。
これも和洋中のジャンルを越えて力をあわせている横浜の料理人の情熱がオルシさんに伝わっている証ではないでしょうか。
ちなみに、オルシさんとローランさんは、饗応の膳2009のメイン・ディッシュを担当しました。それが右の写真。
そしてこのメインのお料理をのせているお皿にもご注目ください。横浜を代表する窯元「増田釜」が今回のために焼いたシリアルナンバー入りの限定皿です。お客様にはお土産としてこのお皿をお持ち帰り頂いたそうです。 |
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記者会見 〜「横浜」という料理のジャンル〜
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ガストロノミ協議会の委員長、霧笛楼総料理長、そして屏風浦小・浜中OBの今平茂さん |
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フランス リヨン市の星付きレストランのオーナーシェフ、ピエール・オルシさん。お店の名前も「ピエール・オルシ」だそうです。 |
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後列左端の宮内さん、前列右側の今平さん、その後ろの吉田さん、お三方とも浜中OB。 |
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左から江川さん、中条さん、福士さん。皆さん磯子にゆかりのある方たち。 |
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記者会見より抜粋
ガストロノミ協議会 委員長 今平茂さん (元町・霧笛楼総料理長、屏風小・浜中OB)
わたくしども横浜ガストロノミ協議会は「開港150周年」「リヨン・横浜姉妹都市提携50周年」という記念の年に向け、食を通して横浜を盛り上げていこうと、約5年前から横浜の和洋中、ソムリエ、バーテンダー、パティシエの皆さんで、食を通したボランティア活動、饗宴レストランやチャリティー・カレー、そして学校などでの食育など、さまざまな活動を行ってまいりました。
今夜開催される饗応の膳では、わたしたちはこの記念すべき年に、まず歴史に学ぶ、それを大切にしました。歴史に学びながら、和洋中の料理人たちが現代の料理を作り上げました。
また、(6月)5日に第一回目が行われたわけですけれども、わたしたちは、小学校の給食の献立を作りました。(その給食を)子どもたちが本当においしそうに食べている顔を拝見させて頂き、この子どもたちは50年後の開港200周年、またリヨン・横浜姉妹都市提携100周年のときにきっと活躍してくれるんじゃないかなと心から思いました。わたしたちはおそらくその頃はいなくなっちゃってると思います。でもそういった将来的なことを、料理人として大切なメッセージを伝えていくことが大事じゃないかなと。
そんなガストロノミ協議会の活動の集大成として、今日、饗応の膳を皆さんの力で作り上げ披露させて頂きます。
ピエール・オルシさん (フランス リヨン市のレストラン ピエール・オルシ オーナー・シェフ)
今回このような場所に呼んで頂いたこと、大変感謝を申し上げます。リヨンにはトップブローシュという協会があり、そちらを代表して私たちは来ているわけですが、そちらの協会と横浜のガストロノミ協議会がこうして交流をさせて頂けることを大変嬉しく思います。
私たちはプロとして仕事をしているわけですけれども、技術的な面だけでなく、ハートを通して、情熱を持った仕事をさせて頂いてるつもりでおります。今回調理学校さんで料理の講習、それから小学校の生徒さんたちと一緒に給食を食べさせて頂くというような特別な機会がありましたが、本当にすばらしい時でした。
今回の夕食会のような行事を催すということは大変な努力を要するものです。これはひとりの力ではどうしてもできることではなく、みんなの力を合わせて初めてできることだと思います。横浜のシェフたちは本当に力を合わせて日夜努力を続けてきてくれました。私たち、シェフたちみんながこの150周年、姉妹都市関係50周年、この日のことを忘れることは無いでしょう。
濱新の三代目店主・山菅浩一朗さん
ペリー提督が来航した際に日本側から提供されたペリー饗応の膳は、本膳料理という今ではほぼ無くなってしまった日本料理の伝統的な饗応料理でございました。
本膳料理というのは、お膳がすべて一堂に皆さんの目の前に在するという料理のスタイルが本来ではございますが、ペリー提督が来たときには、お膳を一膳ずつ交換する、コース料理のような形で出ておりました。
そこに学びまして、今回も私たちはお膳の内容を入れ替え、コース料理の形式でお出ししてまいります。和洋中というジャンル分けの中ではございますが、同じ横浜という土俵に立ってやってるので、僕はジャンルとしては「横浜」という料理のジャンルだと思っております。みんなで力をあわせてやって参りましたので、味の調和も自信を持ってお出しできるものができていると思います。是非ご覧頂いて、また試食して頂いて、お楽しみ頂きたいと思います。
また、このような素敵な会場を貸してくださった三渓園さんにも改めて御礼を申し上げたいと思います。こちら鶴翔閣は文化財でございますので、なかなかしつらえをいじるということも難しいのではございますが、できうる限り150年前ペリー提督が来たときと同じしつらえを再現いたしまして、その中でペリー提督に供したのとまったく同じようなお膳を配置しまして、そこに現代版の、われわれの作った饗応料理が展開するとういような運びになっております。
本日はありがとうございました。
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山菅さんのブログに、今回の食遊會に至るまでの道のりや、横浜の料理人としての熱い想いが掲載されています。ぜひご覧ください。 |
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横浜フランス月間でのガストロノミ協議会の活動が、NHKで特集されるそうです。 |
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ペリー来航時の設えを再現した会場セットをバックに、左から江川さん、今平さん、通訳の方、オルシさん、ボビエさん |
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報道陣向けの試食タイム。そのおいしさに皆さん、驚嘆の声をあげていました。 |
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磯子の料理人が多数参加
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さて、今回の「饗応の膳2009」には、磯子にゆかりの料理人の方たちが多数参加しました。ざっと3分の1以上は、磯子区関係者だったのではないでしょうか。というわけで、「チーム磯子」の写真を一枚。 |
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磯子にゆかりのある皆さんに並んで頂きました。これでもまだ全員ではありません。 |
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写真に写っているのは左から、ビストロ・バルブの横山さん(磯子区在住)、パレ・ド・バルブ
山木シェフ(磯子区在住)、同じく宮内オーナー(磯子区在住)、夕凪店主・江川さん(磯子区在住)、ホテルモントレ横浜
吉田総料理長(磯子区出身、浜中OB)、霧笛楼 今平総料理長(磯子区出身、浜中OB)、Windjammer
福士総料理長(磯子区在住)、ホテルニューグランド 宇佐神総料理長(パレ・ド・バルブと密接な関係)、同じく谷野シェフ(磯子区在住)。
また、うまくタイミングが合わず、この写真には写っていませんが、太田なわのれんの佐藤料理長(磯子区在住)、ビストロ・バルブの中条シェフ(かつて磯子区在勤)も参加していました。
それでは、チーム磯子を代表して3人の方にお話を伺いましたのでどうぞ。
酒菜処・夕凪店主 江川正己さん
ここのところずっと、最後の最後まで準備が忙しくて、昨日もほとんど寝てません。1ヶ月ぐらい前からメニューを考え始めて、皆で打合せを重ねました。磯子に関わりのある人たちは、磯子への思いが入った料理になってますよね。ほとんど皆、磯子の食材を使ってる。
自分が担当した以外のメニューもひととおり試食したけど、そりゃーうまいですよ(笑)。
ただ、ジャンルが違うと、料理方法も違うし盛り付け方も違う。中華だと鮑(あわび)や海鼠(なまこ)をクタクタになるくらい柔らかく煮る。歯ごたえとか、素材の特性をなるべく生かそうとする和食とは対照的です。盛り付けのことを言えば、たとえば、フレンチは盛り付けに装飾品を使う。調理法や味付けにしても、お互いに「そこはどうやってるんですか?」と質問しあったりして。
昔なら料理人同士が情報を交換する機会なんて滅多になかったですから。最近のこういうイベントは、いい交流の場です。レベルアップにもつながるし、今後の横浜の料理界にとって意義深いイベントだったと思います。
今回はガストロノミ協議会の集大成的なイベントでしたけど、僕はまだまだ料理人の皆さんにお願いしたいこと、やりたいことがいろいろあります。これからもよろしくお願いします。
パレ・ド・バルブ・シェフ 山木貴弘さん
楽しかったです。記念のイベントで、ひとつのことをみんなでやり遂げた達成感がありました。
今回、僕が使ったシャコは、寿司ネタとして食べたことしかなくて、自分で使うのは初めてだったんですよ。色も形も少しグロテスクなので、それを消すことを考えてムースにしました。ちょっとクセがある食材かなと思ってたんですが、そんなことはなかったですね。甘みのある優しい味、食べやすいものに仕上がりました。意外にフレンチでも使えることがわかりました。ただ足が速い(傷みやすい)ので入荷してすぐにお出しできる、こういったイベントなどじゃないと、使うのはなかなか難しいんですが、機会があればまた使ってみたいです。
シャコって言えば、僕が以前、元町のレストランで働いてた時代に、毎日のように本牧沖でシャコをとって元町の川っぺりに帰ってくる漁師さんがいたんですよ。オーナーから「今回はシャコでいこうよ」って聞いてすぐにそれを思い出しました。
他の方たちが作ったお料理もおいしかったですね〜! 和食も中華もあって外食した気分(笑)。それもイベントの楽しみのひとつなんです。同じメニューでも人によって味が違うので刺激にもなりました。また機会があればぜひ参加したいです。
パレ・ド・バルブ・オーナー 宮内重明さん
当日になってタイム・スケジュールが変更になったり、お出しする直前まで配膳の微調整があったりと最後までたいへんだったけど、さすがに皆さん素晴らしいものを作ってきましたね。
饗応の場は、非常になごやかでしたよ。ですから、お客様に助けられた面もあって、一生に一度のものとしていい経験ができました。ガストロノミ協議会では地元での食育活動を進めているんですが、給食イベントなどでの体験を通じて、今平さんが言っていたように、今の子どもたちが50年後に思い出して何かやってくれたらいいなぁと思いますね。
関連リンク
○横浜フランス月間2009
○用語解説:ガストロノミー (Wikipedia)
○ピエール・オルシ・シェフ、ローラン・ボビエ・シェフのプロフィールなど (PDF形式、中区大鳥小 公式サイトより) |
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