お寺を舞台に、能と新劇が合体
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2009年2月8日取材 |
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根岸(正確には東町)の真言宗のお寺、大聖院で『朗読の夕べ』というイベントが開催されました。能のワキ方と笛方、そして新劇の女優さんの3人によるコラボレーションです。
さて、まずは大聖院周辺の写真からご覧ください。場所は根岸駅からの徒歩4分。バス通りを渡って、その一本裏の道沿いにあります。 |
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バス通り(山下本牧磯子線)に並行して走る、細くて長〜い裏通り。大聖院の入口は、角のかわいいポストが目印です。 |
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赤い線のように一巡りすると、四国巡拝をしたことになります。
磯子マガジンも、四国巡拝をしたことになりました。 |
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振り返ると、根岸駅前のマンションやモンビル(左端)、高速道路(門の上奥)が見えます。 |
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大聖院の正式な名称は、「根岸山 大聖院 覚王寺」。室町時代の末期、1536年に創建されたそうですから、500年近い歴史があることになります。織田信長が生まれたのが1534年、豊臣秀吉が生まれたのが1536年(37年という説もあり)。ちょうどその頃に建てられたお寺です。
ちなみに、磯子・七福神のひとつ、寿老人があるの寶生寺(南区)の末寺だそうです。 |
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ドラマや映画やミュージカルに負けない面白さ
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内容は小説の朗読・・・、うーん、ただの朗読ではありません。笛の演奏もありますし、能の舞の要素もあって、とてもダイナミックです。能の力強い語りと、現代的な情感のこもった新劇の語りとのコントラストも鮮やかです。
朗読というと、座って本を読みながら淡々と進む「静」のイメージがありますが、今回のコラボレーションは、それとは全然違っていて、「伝統」と「現代」の要素をあわせもつ、新しい形の表現でした。
このレポートをご覧になって少しでも興味を持たれたら、次回はぜひ実際に体験してください。「難しそうだなぁ」というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません!
言葉づかいも難しくなく、予備知識ナシで聞いてもちゃんとわかりますし、演目の前後に楽しい解説もあります。そして、ドラマや映画やミュージカルを見るように、普通にドキドキしたり、怖かったり、感動したり、笑いがこみあげたりするのです。 |
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お寺ならでは。鐘の音を合図に開演です。
最初の演目は、ワキ方と笛方のお二人で、能『高砂』より待謡。 |
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大聖院のご住職・鷲雄さんから、お寺の歴史や、天井に飾られている「赤龍」(奥田元宋・画)についてのお話がありました。 |
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お客さんのすぐ目の前で演じられます!
これは『道成寺』より語りの部分 |
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続いて舞台女優の水野ゆふさんが登場し、夏目漱石の『夢十夜』。 |
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椎名林檎さんのような、日本のホラー映画のような、凄い迫力の水野さん。幽霊の役です。 |
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夏目漱石は能を習っていたそうで、安田さんによると『夢十夜』には能の要素が伺えるとのこと。そして、このお話は怪談です。怖かったです。日本を代表する文豪の筆による怪談は、おそらくそれだけで十分怖いはずですが、それに輪をかけて水野さんの表情と声色の凄い迫力。もう、そういう人・・・、人というか幽霊にしか見えません。終演後の水野さんの取材はやめようと思いました。客席からも「こわい〜」という囁きが。
この後、今回が初上演という『名人伝』(中島敦)が続きます。 |
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一転して、鈴木京香さんのように柔和な表情の水野さん。やっぱり取材することにしました。 |
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最後の演目の前に、お客さん参加のワークショップも行われました。能「海人」(あま:海士と表記することも)の見せ場の部分を、安田さんのリードに合わせて、全員で声を出します。
そして最後の演目は、これまでの雰囲気とはガラリと変わって、夏目漱石の『吾輩は猫である』。くすくすという笑い声が会場から聞こえてきます。 |
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取り上げられたのは、主人公の猫が、餅を食べてみたら噛み切れなくて、歯にくっついちゃって大変だ、という「餅の段」。写真はそのクライマックスで、後ろ足で立ち上がって餅を振りほどこうと右往左往する猫の様子が、能の動き(?)でユーモラスに表現されます。客席はみんなニコニコ。 |
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終演後、安田さん・槻宅さん・水野さんにお話を伺いました。
2005年にノルウェー、スウェーデン、イギリス(ロンドン)、東京で公演が行われた新劇と能のコラボレーション『二人のノーラ』で共演したことが、その後、3人で活動を始めるキッカケになったそうで、以来、年に数回、公演を行っているとのこと。安田さんと水野さんの語りの分担や、槻宅さんの笛がどこに入るかなど、脚本・構成は3人で話し合って決めていくそうです。
2/11には埼玉県川口市でワークショップがあるそうですが、残念ながら横浜近辺では次の予定は決まっていません。鷲尾住職も「また開催してください」とおっしゃってましたし、磯子マガジンもぜひ、また見たいです。この日、観覧した多くの方も同じ思いだと思います。
なお、この3人のユニットに「名前はまだ無い」そうです。ただ、安田さんに教えていただいたホームページ「和と輪」を拝見すると、「和と輪」というのがユニットの名前のようにも受け取れるのですが、どうなのでしょう。 |
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奥田元宋画の「赤龍」
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最後になりましたが、大聖院の本堂天井に飾られている「赤龍」をご紹介します。
作者は奥田元宋(1912-2003)。東山魁夷が青を得意としていたのに対し、奥田元宋は赤が特徴で、それを称して「元宋の赤、魁夷の青」という言葉があるほど。
鷲尾住職の大叔母さんの龍子さんが、奥田元宋の奥様だったそうで、龍子さんの七回忌の供養のために、名前にちなんだ龍を「赤」で描き、奉納したものだそうです。 |
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なお、今回のようなイベントがないときでも、ご住職に一声かけて頂ければ、この本堂の貴重な天井画を見せてくださるそうです。 |
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関連リンク
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関連リンク、今回はたくさんあります。
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