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二人のアメリカ人が奏でる箏と尺八の音色

2008年11月3日取材
邦楽花舞台@久良岐能舞台11月3日(祝・月)、「文化の日」にふさわしいイベントが開催されました。題して「邦楽花舞台 〜紅葉の中で楽しむ邦楽の夕べ〜」。

会場は久良岐能舞台。出演は二人のアメリカ人。演奏する楽器は箏(こと)と尺八。観客のほとんどは日本人。不思議な組合せです。

箏を担当するのはカーティス・パターソンさん。尺八はブルース・ヒューバナーさん。1960年代生まれのお二人は、それぞれあるとき日本の楽器に魅せられ、80年代後半に来日し、現在は日本に住み、2006年からは二人組のユニットとして日本国内の各地で演奏やCDリリースなどの活動をしています。
邦楽花舞台@久良岐能舞台 邦楽花舞台@久良岐能舞台
箏:カーティス・パターソン
尺八:ブルース・ヒューバナー
邦楽花舞台@久良岐能舞台
開演時刻ギリギリに満員の会場に到着するとすぐに演奏が始まりました。そしてすぐに、これは公演前に想像していたものと全然違う、と思いました。

磯子マガジンの持っていた邦楽のイメージは、要するに、正月にテレビや商店街で流れてくる、あの音楽です。曲名はわかりませんが、「ポ〜ン・ティラリラリン」というあの曲のあのイントロです。

しかし、久良岐能楽堂で耳にした箏と尺八の演奏は、「ポ〜ン・ティラリラリン」のようなものだけでなく、実に多面的で、色彩豊かなものでした。

例えば箏。弦の弾(はじ)き方は一様ではなく、強弱はもちろん、ひっかくようにしたり、逆方向から弾いたり、フォークギターのように和音を出したり。弦を弾く右手に続いて、その音を変化させる左手の動きにも目を奪われました。弦を押し下げるとスウッと音が高くなり、弦をつかんで左右に揺らすとビブラートがかかります。

そんな数々の技巧によって、時に激しく、時に静かに、曲想はさまざまに表情を変えていくのでした。とりあげられた曲も、ジャズあり、純邦楽あり、オリジナルあり、唱歌ありで飽きることがありません。
邦楽花舞台@久良岐能舞台 邦楽花舞台@久良岐能舞台
曲間には楽しいおしゃべり。すべて日本語。ただし、箏のカーティスさんは調弦が忙しく、口数は少なめです。
邦楽花舞台@久良岐能舞台 邦楽花舞台@久良岐能舞台
ロックギターでいう「チョーキング(bend)」のように左手で弦を押さえつけて音程を変えています。この奏法は「後押し」(あとおし)というようです。
尺八のブルースさんは、ときには立ち上がって演奏
邦楽花舞台@久良岐能舞台 邦楽花舞台@久良岐能舞台
第一部終了後の休憩中に見つけた、木製と思われる不思議な箱。その正体は休憩後の第二部で明らかになりました。
正体はインドで生まれた楽器でした。(名前は「シュリバ」と聞こえたのですが、ネットで見つけられませんでした。)オルガンのような優しい音色です。本当は足で演奏するものではないそうです。
邦楽花舞台@久良岐能舞台
アンコールでは磯子まつりのハッピを肩に掛け、演奏されたのは日本の歌。歌の担当は会場のお客様。
お二人はお寺や神社で演奏する機会は多いそうですが、能舞台での演奏は年に2、3回とのことで、演奏会中にも何度か「能舞台で演奏できて本当に嬉しい、ありがとうございます」と話していました。終演後にお話を伺ったところ、「お客様に自分達の音がそのまま伝わる気持ちの良さ、一体感が素晴らしい。PA(マイク、スピーカー等)を通さずに生音というのがまた最高です」とのこと。能舞台は音響も優れていて、音がとても良く響くんだそうです。

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<<プログラム>>
1.イカルス (ラルフ・タウナー作)
2.アフター・ザ・レイン (ジョン・コルトレーン作)
3.サンデー・アフタヌーン (オリジナル=カーティス作)
4.カタクリの花 (オリジナル=ブルース&カーティス作)
5.千鳥の曲 (吉沢検校・作)
6.楽 (沢井忠夫・作)
7.さがり (青森で伝承された曲)※
8.曲水 (オリジナル=ブルース&カーティス作)

休憩

9.ラブ・イズ・ロード・オブ・オール (アイルランド民謡)
10.野ばらによせて (エドワード・マクドウェル作)
11.ア・チャイルド・イズ・ボーン (サッド・ジョーンズ作)
12.ディープ・フォレスト (オリジナル=ブルース作)
13.風のうた (現代邦楽)※

アンコール
14.紅葉 (高野辰之・作詞 岡野貞一・作曲)
15.里の秋 (斎藤信夫・作詞、海沼實・作曲)
16.アメイジング・グレイス 〜沖縄風味〜 (賛美歌)

マークの曲は当日、追加・変更されもので、プログラムに記載がないため、曲名の表記などが間違っているかもしれません。

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この演奏会の主催は「思いっきり楽しい国際交流」。磯子区に在住の外国人の方たちと楽しく交流することを目的に活動しているユニークな団体です。これまで磯子マガジンで何度か主催イベントをとりあげています。

代表の椎熊さんによると、今回のコンサートは、地域の方たちに、あまり堅苦しくない形で、リラックスできる雰囲気の中で日本文化に触れてもらいたいという主旨で企画したとのこと。「国際交流の場では自国の文化に話が及ぶ場面が多い。そのときしっかり日本の文化を語れるようにするためには、まず日本の文化に興味を持つことが必要。そのキッカケとなれば嬉しいです」と話してくださいました。

今回はスタッフ5人だけで全てを企画・運営したので何かと大変だったそうですが、その尽力のおかげでたくさんのお客様が来場し、本当に大盛況でした。

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ところで、今回の演奏会では何度も「申し訳ありません」という気持ちになりました。

「箏っていい音するんだなぁ」「尺八、かっこいいなぁ」「へー、箏って弦が13本なんだね」「長さが一尺八寸だから尺八なんだ!」

邦楽については知らないことばかりで何度も驚かされるわけです。そしてそのたびに、「それをアメリカ出身の人たちに教わっているのか・・・」「日本人なのに何も知らずに申し訳ありません!」と、そういう気持ちになるのです。

そんなわけで、箏と尺八について、ごくごく基本的なことですがネットや本で調べてみました。

箏(こと):弦は13本。柱(じ)と呼ばれる駒(今回のコンサート写真の白いもの)を移動して調弦(チューニング)します。さまざまな調弦法があり、例えば平調子(ひらぢょうし)は西洋音階の「ミ・ファ・シ・ラ・ド」。カーティスさんも曲が終わるたびに調弦を変更していました。
なお、もともとは箏(そう)、琴(きん)、琵琶(びわ)の総称が「こと」だったそうです。

尺八(しゃくはち):長さが一尺八寸あるので尺八。ただし、現在はさまざまな長さの尺八があります。
指孔(指で押さえる穴は5つが基本。うちひとつはリコーダーと同じように裏側にあって、親指で押さえます。リコーダーで音を区切るときは舌でタンギングしますが、尺八では微妙な指使いで音を区切ります。時代物の映画やドラマで、尺八を吹きながら首を上げ下げしたり左右斜めに振ったりするのを見ることがあると思いますが、それによって音を上げたり下げたり、ビブラートをかけたりできます。

○参考:『実践「和楽器入門」』(ヤマハミュージックメディア) ISBN4-636-72023-7
○Wikipedia / 尺八

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関連リンク
カーティス・パターソン 公式サイト
ブルース・ヒューバナー 公式サイト
CANDELA 公式サイト (ブルースさんが所属するジャズ・バンド。JAZZ meets 尺八!)
純邦楽CDショップHOW (カーティスさん、ブルースさんのCDも購入できます)

久良岐能舞台について

会場は久良岐公園に隣接する久良岐能舞台。磯子マガジンが久良岐能舞台をきちんと取材するのは、初めてです。これまでは二年半前に一度、能舞台の前を通りかかっただけでした。
そこで、久良岐能舞台の外観写真とその由来を少しだけご紹介します。
久良岐能舞台 久良岐能舞台
久良岐能舞台の由来 久良岐能舞台
能舞台の入口に掲示されている能舞台由来記
(クリックで拡大します)
今回のイベントは「磯子まつり」のひとつでもありました。
能舞台の由来については、上の写真をクリックしてご覧ください。ごく大まかに要約すると・・・

「高浜虚子の兄・池内信嘉さんが、能楽が衰退・凋落していくのを見かねて、能楽師を養成するための道場として、大正6年、東京の麹町に建てたものです。数多くの人間国宝が巣立っていきました。昭和6年に東京音楽学校(現・東京芸大)に寄贈された後、昭和40年(1965)に宮越賢治さんが譲り受け、久良岐に移設されました。昭和60年には宮越さんが横浜市に寄贈し、現在は横浜市の建物です。」

ということになります。

久良岐能舞台の今後の予定
12月6日(土)
午後7:00開演
TALKING TAIKO 詩人とパーカッションのコラボ
バイリンガル詩人「影山優理」と、ガーナ出身のパーカッショニスト「ウィンチェスター・ニ・テテ」のコラボレーション  >>公演チラシはコチラ
2,000円
12月14日(日)
午後2:00開演
能と狂言の楽しみ 〜鑑賞と体験〜
解説:能と狂言の魅力について、鑑賞:狂言『長光』、能『養老』、体験コーナーなど  >>公演チラシはコチラ
3,000円
小中学生無料!
●お問合せ:久良岐能舞台(磯子区岡村8−21−7) 045−761−3854 公式サイトはコチラ
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