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磯子中央病院に、ファゴットの音色が響いた日

2012年6月2日取材
磯子中央病院(磯子2丁目)の1階ロビーでクラシック音楽のコンサートが開催されました。これは、入院患者さんの心を癒すため、「四季のコンサート」という名称で開かれているもので、今回で3回目。

そして3回目にして初めて、院外から演奏者が招かれました。それが、東山耳鼻咽喉科医院(森2丁目、屏風浦駅そば)の院長・東山佳澄(ひがしやま・かすみ)さんと、その同門のファゴット奏者の人たち。

このコンサートのために結成された5人組の「ファゴット・アンサンブル・ホーステンス」として、他ではなかなか見られないファゴット(英語ではバスーン)だけの四重奏、五重奏を披露しました。

磯子区医師会の会合を通じて今回のコンサート出演に至ったという東山さんは、学生時代にファゴットを始め、医師となった現在でも地域のオーケストラに所属して演奏活動を続けています。東京などから駆けつけたほかの4人のメンバーも、アマチュアとはいえ腕前はセミプロで、それぞれが地元のオーケストラなどに所属しているそうです。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院 ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
2010年1月に磯子駅と根岸駅の間に移転した磯子中央病院。以前は磯子駅から杉田駅方向に向かったところにありました。
メンバーの名前とプログラムが張り出されていました(クリックで拡大)
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
このコンサートを企画した、磯子中央病院の企画委員会のメンバーが登場し、池田裕(ゆたか)院長の挨拶でコンサートがスタート。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
ファゴットだけの演奏ユニット「ファゴット・アンサンブル・ホーステンス」。メンバーは5人ですが、最初は1人お休みで4人で演奏。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
こんな感じでロビーが大勢の人で埋まりました。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
今回のコンサートのリーダー的役割の東山さんが、ファゴットについて説明しています。掲げているのはオーケストラの写真。丸が付いているあたりが、ファゴットの定位置だそうです。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院 ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
途中で5人目のメンバーも登場(右端)
東山さん(右端)が演奏しているのは、普通のファゴットより1オクターブ低い音が出せる「コントラ・ファゴット」。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
本編ラストは磯子区出身の美空ひばりさんの、最後の大ヒット曲『川の流れのように』。企画委員の合唱つき。見ている皆さんも合唱。
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
ファゴットのコンサート in 磯子中央病院
そしてアンコール。5人全員で『まんが日本昔ばなし』のオープニング・テーマとエンディング・テーマをメドレーで。
ファゴットだけのコンサートは、磯子マガジンも初めてでしたが、優しく、やわらかい、包み込まれるような音楽でした。

オーケストラの中ではファゴットは縁の下の力持ち的な存在で、トランペットやヴァイオリン、フルートのようにメインで活躍することは少ないそうです。ただ、おどけた、ユーモラスな感じを出すのが得意なので、例えばアニメ『ドラえもん』ののび太のテーマ曲『のんきなのび太くん』で使われていたり、アニメ『まんが日本昔ばなし』では、冒頭の「むかーし、むかしのことじゃった」というセリフとともに物語が始まるあたりで、ファゴットによる演奏が聞こえてくることが多いそうです。のほほんとして、ホッとするあたたかい感じがファゴットだとうまく出せるのだと思います。

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コンサートを観ていた男性患者さんの話
「なごやかで、アットホームな雰囲気で良かったですよ。闘病生活の癒しになるね!」

コンサートの発案者で、企画委員会の顧問である梅川淳一さん(脳神経外科部長)の話
「患者さんには、普段、注射などで痛い思いをさせているので、ホッとできるひとときをお届けしたいと始めたのが四季のコンサートです。これまでの2回は、院内で募集をかけて、トロンボーン、クラリネット、フルート、ギターなどの楽器ができる職員が集まってくれて、企画委員も合唱で加わってコンサートを開いていました。クリスマス・コンサートでは企画委員のメンバーがハンドベルにチャレンジしたり。

ファゴットのコンサート in 磯子中央病院ただ、身内が演奏する場合は失敗するんじゃないかと思ってドキドキするんですよ(笑)。だから今回は、磯子区医師会を通じて東山先生たちに演奏をお願いすることができたので、安心でした。

私はファゴットのことを申し訳ないんですけど今までよく知らなくて、見た目から音が低いのかと思ったら、けっこう高い音も出るんですね。驚きました。もちろん、とても耳ざわりがいいといいますか、素晴らしい演奏をして頂いて、患者さんたちも喜んでくださったと思います。ありがとうございました。

4回目は、11月か12月に開催したいと考えています。内容はこれからですね。」

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ファゴット・アンサンブル・ホーステンス
2011年末結成。元東京都交響楽団のファゴット奏者・馬場自由郎(じゆうろう)さんの門下生5人が、今回の磯子中央病院でのコンサートのために集まりました。以来、6ヶ月、ときには5時間にも及ぶ数回の合同練習を経て、この日を迎えたそうです。今後も磯子や横浜で演奏活動を続けていきたいとのこと。終演後に皆さんにお話しを伺ったのでご紹介します。

吉野 宏昭(よしの・ひろあき)さん 45歳、海上自衛官
緊張しました。それと、老人ホームや小学校で演奏すると、皆さんそれぞれの気持ちで聞いて頂けるので、われわれ演奏してる側も得るものがたくさんあるんですけれど、今回もそうでした。あとは演奏面で反省がいっぱいあるので、のちほど内輪で反省したいと思います。(笑)

有富 梨恵(ありとみ・りえ)さん 30代、会社員
普段オーケストラにいて、「クラシックが好きな人たちがやるような曲」ばかり演奏しているので、カジュアルな方向にはあんまり興味を持っていなかったんです。でも、今回こういう活動をやってみて、多くの方が知っている曲を演奏して、皆さんに楽しんで頂くのも凄くおもしろいことなんだと思いました。今後は、もうちょっと修行して、お聞かせする余裕を持って演奏したいと思います。

小野 亜希子(おの・あきこ)さん 1970年代生まれ、公務員
子どもも小さいので、施設などでの演奏活動も単発ですることが多いんですが、今回東山先生から話を頂いて、とっても嬉しく思いました。メンバーも同じ門下生なので、方向性がとっても合わせやすい。実りがある感じがしてとっても楽しんで吹いていました。間違えちゃったりもしたんですけど、とっても楽しく吹かせて頂きました。

谷 佳詩子(たに・かしこ)さん 最年長、広告代理店勤務
普段、自分たちが企画したコンサートでは、お客様も、それを聞くために会場に足を運んでくださいます。それに対して今回のような依頼演奏は、たまたまここにいらっしゃる、というお客様もいらっしゃいますよね。ですから、場の空気に呼応するような演奏を心がけています。
それと、今日はコンサート・ホールと違って、お客さまとの距離が近くて、私達ひとりひとりの演奏がお客さまによく聞こえてしまうので、非常に緊張しました(笑)。それに、みなさんがよく知ってる曲っていうのはメロディを間違えたらすぐにわかっちゃいますし、ごまかしがきかない。だから、けっこう緊張しましたね。
ファゴットは珍しい楽器で、ふだん目にすることは少ないと思いますので、そこを面白い、いい楽器だなと思って頂ければいいなと。ファゴットだけのアンサンブルで、こんなこともできるんだっていうことが伝わればいいなと思いながら演奏しました。

東山 佳澄(ひがしやま・かすみ)さん 42歳、医師
磯子区医師会の会合で、池田院長と「磯子区には芸術文化が少ない」という話題で一致して。それで池田院長が「磯子中央病院から発信したい」ということでしたので、「それなら仲間を集めて演奏します」とお応えしてこのコンサートが実現しました。
手作り感がいっぱいの素敵な演奏会でしたね。演奏自体はそんなに緊張しなかったんですよ。お客様が患者さんとかナースの方たちとか、仕事柄、見慣れた格好なので(笑)。で、トークが一番緊張しました。本当はもっとやりたいこととかあったんです。ファゴットを分解して構造を説明したり。準備してたんですけど、緊張で頭の中がすっとんじゃって(笑)、できませんでした。
これを機会に、テレビでオーケストラが出てくるようなことがあったら、ぜひ、ファゴットを探してもらいたいです。


★ファゴット・アンサンブル・ホーステンスの皆さんにお聞きした、ファゴットQ&A:
Q:ファゴットの魅力は?
A1:マイナーな物をあえて選ぶような人が集まってるので、結束が固い(笑)。
A2:人の声に近い。合唱の人たちと一緒にやってみて思ったんだけど周りの音に溶け込みやすいというか、主張する楽器じゃないんですよ。オーケストラの中でもそうなんですけど、縁の下の力持ちっぽいというか。日陰の身なんだけど、やわらかい感じというか、周りと親和性があるところが複数の人間でやるのに向いているんですよね。
A3:ひとつの楽器で3オクターブ強、人によっては3オクターブ半まで出せる楽器は、ほかにあんまり無いです。その特徴を生かして、単一楽器でアンサンブルができます。

Q:ファゴットって、ポジション的にはチューバと似てますか?
A:そうですね。オーケストラの中の役割はよく似てますね。チェロとかコントラバスとも似たような役割です。

Q:ファゴット奏者の特徴は?
A:ファゴットという楽器が「主張しない」のと同じように、ファゴットを吹いてる人たちも自己主張が激しくないんですよ。おっとり、のんびりした感じで、なにか頼まれると断れない人が多い。ヴァイオリンとかオーボエ、フルートの人たちは「私、イヤ」って言える。姫系の人が多いし(笑)。

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というわけで、磯マガ読者の皆様も、どこかでファゴットの演奏を見かけたら、「あ、これが例のファゴットか」とちょっと耳を傾けてみてください。その癒しの魅力に気付いてしまうかもしれません!
関連サイト
磯子中央病院 公式サイト
東山耳鼻咽喉科医院 公式サイト
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