ペルー大統領に渡された磯子・金沢からの手紙
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2010年10月26日取材 |
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磯子区の各駅にも警察官が配備されるほどの厳戒態勢だったAPECに来日していたペルーのガルシア大統領に渡された手紙があります。磯子区・金沢区に住むペルー人の子ども達が、大統領に宛てて、母国語であるスペイン語で書いた手紙です。 |
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こちらは、磯子区に住むペルー人の子どもからの手紙集の表紙です。 |
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手紙の中身をご紹介。文字だけでなく、たくさんの絵も描かれています。 |
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事の起こりは、ペルーの子ども達と、磯子区の子ども達による絵の交流。女流画家の空井美和さんが、ペルー滞在中、現地の子ども達に絵を教えていたことから始まります。その後、ペルーと磯子の子ども達が描いた絵が一緒に展示される展覧会がペルーと日本で開催され、草の根的な国際交流として定着していきます。パレ・ド・バルブの宮内オーナーが委員長を務める「せかいのこどもたち展実行委員会」というグループもできました。
今回は、横浜のAPECにペルーのアラン・ガルシア大統領が来日するということで、磯子区に住んでいるペルー人の子ども達に手紙を書いてもらおうという企画が生まれ、さらにその輪は金沢区にまで広がったのです。
両区内の保育園、小・中学校、そして両区役所の協力で、磯子区10人、金沢区36人の子ども達から、手紙や絵が集まりました。10月26日、実行委員会のメンバーはそれを携え、渋谷にあるペルー大使館に向かったのです。
※手紙は、下記のような道程を経て大統領に渡されることになっています。
<<子ども達>> → せかいのこどもたち展実行委員会 → ペルー大使館
→ <<ペルー大統領>>
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ここで日本に住むペルー人や、その子ども達(=在日ペルー人1世・2世)の状況について少し紹介します。
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総数 |
中国 |
韓国・
朝鮮 |
フィリ
ピン |
ブラ
ジル |
米国 |
ベト
ナム |
ペルー |
タイ |
インド |
横浜市 |
78,049 |
33,587 |
15,475 |
6,598 |
3,204 |
2,441 |
1,859 |
1,565 |
1,487 |
1,416 |
磯子区 |
3,658 |
1,610 |
702 |
304 |
391 |
102 |
15 |
143 |
57 |
38 |
金沢区 |
2,638 |
702 |
484 |
209 |
201 |
87 |
76 |
396 |
69 |
40 |
鶴見区 |
9,520 |
3,080 |
1,852 |
976 |
1,374 |
136 |
108 |
501 |
129 |
258 |
横浜18区のうち、ペルー人が住んでいる区が多いベスト3は、多い順に鶴見区、金沢区、磯子区です。他の国の外国人も含めた外国人の総数では磯子区が18区中7番目、金沢区が12番目ですから、磯子区・金沢区はペルー人が多いのが特徴と言えそうです。ちなみにブラジル人の多さも磯子区が2番目、金沢区が4番目なので、両区には南米から来ている人が多いんですね。
ただし、いくら磯子区・金沢区にペルー人が多いとは言っても、日本人も含めた中で見ると・・・
磯子区の人口=165,674人 |
そのうち外国人は2.2%、ペルー人は0.09% |
金沢区の人口=209,543人 |
そのうち外国人は1.3%、ペルー人は0.19% |
つまり磯子区は1000人に1人、金沢区は500人に1人。圧倒的な少数派です。そんな状況で、特に子ども達が生活していくのは、大変なことも多いかもしれません。
※人口データはいずれも2010年10月末現在。横浜市統計ポータルサイトより引用。
外国人の人口は、このページで確認できます。
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/jinko/non-jp/new-j.html
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さて、肝心な大統領への手紙の中身ですが、名前・年齢・好きなものなどの自己紹介のほか、自宅の住所や電話番号が書いてあったり、日本の名所(富士山や東京タワー)を絵と文で紹介しているものもありました。
また、ペルーで生まれて日本に引っ越して来た子もいれば、日本で生まれた子もいるので、手紙の中でも、日本語が理解できなくて困っていると訴える子がいる一方で、両親の母語であるスペイン語を勉強したいと希望する子もいます。
また、彼らの名前や苗字から、親が日系と思われる子が少なくありません。つまり、かつて日本からペルーに移住し、世代を経て日本に帰ってきているということですね。
さぁ、そんな手紙を抱えて、一行は渋谷のペルー大使館へ! |
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日系ペルー人のパトリシアさん(中)、画家の空井美和さん(右)も合流 |
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ペルー大使館前にて、その他のメンバーも揃いました。 |
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大使は不在のため、二等書記官のジョイシ・ゴヤさん(中央)に面会。 |
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すると、公邸へ案内されます。大使館と同じ建物ですが入口は別でした。 |
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この公邸内で手紙をゴヤさんに手渡すことになるようです。
その前に、公邸の中に展示されているさまざまな品を解説してくださいます。 |
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ペルーと言えば、「トゥミ」と呼ばれる儀式用ナイフが有名。これがインカではなくシカン文化のものだと突き止めたのは日本人だそうです。 |
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ペルーでは闘鶏も行われているそうで、これは銀製の豪華な置物。 |
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インカ・コーラが振る舞われました。年に1度の磯子国際交流フェスでも飲むことができるペルーの炭酸飲料です。 |
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こちらは特産品の紫とうもろこし。ポリフェノール、アントシアニンがたっぷり入っています。チチャモラーダという飲み物の原料です。 |
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と、このあたりで、今回の訪問に際して見つけた、ペルーと日本のつながりについてのエピソードです。
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今回、手紙を預かってくださった二等書記官のジョイシ・ゴヤさんは日系3世。祖父母が4人とも日本人で、沖縄からペルーに渡ったとのこと。「ゴヤ」さんは漢字にすると「呉屋」さん。沖縄では珍しくない苗字のようです。 |
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○ |
野口英世は1899年(明治32年)、金沢区の横浜海港検疫所で約5ヶ月間、働いていました。その約20年後の1920年(大正12年)にペルーを訪問し、業績を残したため、ペルーにはヒデヨ・ノグチという名の学校があります。そしてなんと、空井美和さんはその学校でペルーの子ども達に絵を教えていました。
※横浜海港検疫所内にあった細菌検査室の建物は現存しており、見学可能です。詳細はコチラ。
※Wikipediaの野口英世の項目を読むと、子どもの頃に“偉人伝で知った野口英世”とは違うた実像を知ることができて、面白いです。 |
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ドラマ『踊る大捜査線』で織田裕二演じる青島刑事が持っていたバッグは、米国のトゥミ(Tumi)社の製品。その社名の由来は、まさに上の写真で紹介しているペルーのトゥミ・ナイフのようです。
トゥミ・ジャパン公式サイトにはこんな記述があります。「トゥミという社名は、南米の青年平和部隊のボランティア活動に参加した創業者が、ペルーの神「トゥミ」にちなんで名づけたことに由来します。」
ただ、実際にはトゥミは神様の名前ではなくナイフのことなので、創業者の方は例えばこんなこんな商品でも見て勘違いしたのでしょうか。 |
閑話休題。いよいよ、子ども達の手紙をゴヤさんに渡すときが訪れました。 |
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そしてまず、金沢区からの手紙がゴヤさん(左)に渡されました。 |
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ゴヤさんは、「必ず大統領に渡します!」と何度も力強く約束してくれました。ですので、手紙は既に大使から、APECで来日したガルシア大統領に渡された筈です。続報が入り次第、お伝えします。 |
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