今平シェフから (抄)
3月13日(火)に食育をかねた料理講習会を磯子の屏風ヶ浦小学校で5年生に行います。実は、この小学校は私の母校でもあり、昨年50周年を迎えられ、たまたま私がその席に招待を頂きました。

その時、約40年ぶりに校歌を歌いまして、何とすらすら歌えますことに、自分の事ながらビックリ致しました。また、当時、毎朝クラスのホームルームでみんなで合唱していた言葉も、ふっと思い出しました。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」という言葉です。

その年頃の色々な出来事は、一生の記憶に残る、長い人生でもたいへん大切な時であることを痛感した瞬間でした。



「先輩、今度、家庭科の実習で野菜を使うことになりました。何か教えて下さい」
たしか昨年の夏頃だったと思います。屏風浦小の5年生の子供達から直接、私の勤めている霧笛楼に電話がありました。

「それでは、地元横浜の旬の野菜を使ってみなさい」と私は答えました。「え? 西洋野菜とかフランスの野菜とかではないのですか」と聞き返されたので、「もちろん西洋野菜やフランスの野菜も素晴らしい。でも一番近くにある、もぎたての瑞々しい横浜の野菜こそ、今、その美味しさを知らなくてはいけないよ。そしてその野菜は近くの八百屋さんに必ずあるはずだから、聞いてご覧」と私は答えたのです。

数日後、担任の先生より電話があり、「生徒達があの電話からすごく一生懸命になり、真剣に地元の野菜を使って頑張っています。地元の新鮮な野菜はとても美味しい、包丁で切ったときの音が違う等など、沢山の感動がありました」とのご報告を頂きました。近所の八百屋さんが、親身になって、地元の新鮮な野菜をいつも届けてくださり、また、私の「地元の野菜を」との話を聞いて、その八百屋さんは、生徒達に野菜の調理法などを教えてくださったのだそうです。

後から知ったのですが、その八百屋さんは、私が飼育係をしていた小学生のときに、いつもウサギのえさを分けてくれていたお兄さんだったのです。

そんなことが、今回の料理講習会に繋がっています。まさしく「一人がみんなの為に、みんなが一人の為に」です。料理を通して、当時大変お世話になりましたご恩返しが、今回少しでもできることを、とても光栄に思います。



生意気な言い方になってしまいますが、そんな思い出や、また私より素晴らしいご経験をお持ちの方々が、地域には大勢いらっしゃる事と思います。

今の時代、そのような方々に、ぜひ地元の小学校・中学校の生徒の皆様に、何かお伝えして行く事も大変大切だと、私は心より信じております。今後にいい意味で繋がり、いい意味で広まっていって頂ければ、と心より願っております。

霧笛楼 総料理長 今平 茂

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